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師匠が無茶を言う理由

「考えるのではない……感じるのだ」(Don’t think… feel…)
というマスター・ヨーダのお言葉を前回紹介しました。
実はこれ、「燃えよドラゴン」の中でブルース・リーが言った有名な台詞でもあるそうです。
最近、たまたま見た「獣拳戦隊ゲキレンジャー」でも使われていました。

「撮るときは、何も考えていない」
風景写真作家たちからよくこんな言葉を聞くことがあります。
彼らは撮影するときに、「ここは○○だから、構図はこうで……」とか、「ここでの狙いは○○だから露出は……」と考えてはいないというのです。
では、デタラメに撮っているのか、というとそんなわけはありません。
彼らの作品には、狙いがあり、その狙いを表現するための構成がきちんと取られているのです。

では、どうして写真作家たちは「何も考えていない」などと言うのでしょう。
その理由は、おそらく右脳と左脳の働き方にあるのではないか、と私は推測しています。
つまり、「構図をこうして、露出をああして」と言語的、左脳的に考えているのではなく、右脳で映像的に思考しているのではないかと。

私はどちらかと言えば、左脳的思考の人間で、残念ながら写真作家になるほどの才能を持ち合わせていません。
「そんな奴が『風景写真』の編集長をやっていていいのか!」とお叱りを受けるかもしれませが、私の仕事は写真作家ではなく編集者です。
写真作家たちの右脳的、直感的な思考を、言語としてわかりやすく“翻訳”するのが自分の使命だと思っているのです。

「考えるのではない……感じるのだ」
風景写真の技法も、はじめは言葉や文字として学び、身に付けていくしかありません。
しかし、最終的な目標は、無意識にフレーミングをまとめられる境地にあるのだと思います。

最後にマスター・ヨーダの名言をもう一つ。

「『やる』か、『やらぬ』かだけじゃ。『やってみる』というのはない」
(Try not. Do or do not. There is no try.)

右脳野郎のキレた師匠なら、これくらいの無茶は言って当たり前です。

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※明日は林 幸恵さんの写真展の初日で、大阪に行ってきま〜す。
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by fukei-kaoru | 2007-11-29 23:00 | 仕事

風景写真のダークサイド?

「恐れはダークサイドに通じる。
恐怖は怒りへ、怒りは憎しみへ……そして憎しみは苦しみとなる」
偉大なマスター・ヨーダのお言葉です。う~ん、深い……。

この仕事を始めて、もう10年以上になりますが、その間に関わった中で、もっともダークな印象の口絵が1-2月号に掲載されます。
冒頭の台詞はただの“ダークつながり”で特に意味はないです。
スミマセン……。

通常、暗い印象の口絵は読者に敬遠されがちなので、暗さを抑えるように組むことが多いのですが、作家から預かった作品を眺めていると、ダークな世界観がその作家の持ち味であり、やりたいことなのだと思い、思い切ってその方向を活かす組み方をしてみたのです。

組み上がった構成をスタッフに見せて感想を聞くと、「怖い!怖すぎる!」とか「心に闇を持っている人が見ている風景」、「夢に見そう」といった反応が返ってきました。
しかし、一度目にすると、そのインパクトは強烈らしく、結局そのままの構成で掲載されることに決まりました。

誤解のないように補足しておきますが、作家ご本人は優しすぎると思うくらい、優しくて温厚な方です。それだけに作品とのギャップが不思議なのですが、実はこの口絵、何度も見ていると、不思議に癒される感覚もあります。

私自身は、この口絵を見方によって、いろいろな受け取り方ができるように組んだつもりです。
皆さんは、どうご覧になるでしょう。
敢えて、今は作家名を明かしません。
ご覧になれば、ここで言っているのがどの口絵のことなのか、すぐにわかると思います。
皆さんが見て、自分の感覚で作品の世界を感じていただきたいと思います。

「考えるのではない……感じるのだ」
この言葉が風景写真作品を観賞するときの真理を表していると言えるでしょう。
誰が言ったのか、ですって?
もちろんマスター・ヨーダでございます。

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by fukei-kaoru | 2007-11-28 00:16 | 仕事

「夢色の世界」写真展、まもなく開催

林 幸恵さんの写真展「夢色の世界」が11月30日(金)から12月
6日(木)の間、富士フイルムフォトサロン大阪で、開催されます。
最近、このブログで紹介している林さんの写真集「夢色の世界」も会場で実物を手にとってご覧になれます。もちろん、その場で購入もできます。
ぜひ、会場に足を運んでいただき、林さんが描く夢色の世界をのぞいてみてはいかがでしょう。
私も初日に会場にお邪魔するつもりです。

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ところで、このブログ、なるべく間を空けずに更新しようと決意したのですが、その決意も日々の忙しさの前に流されてしまいそうな……。
いよいよ、大詰めが迫ってきたという、こんな時期になって、少々風邪気味です。
でも、ここまで来たら、仕事をしながら直すしかありません。
頑張ります!
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by fukei-kaoru | 2007-11-27 10:28 | お知らせ

見つめる木

昨日の昼食は、ちょっと贅沢をして、以前に、「プロのこだわり」で書いたお鮨屋さんでちらしずしをいただきました。
これにはわけがあって、写真家の前田 晃さんから、店のご主人に丹溪(前田 晃さんの事務所)の2008年度版カレンダーを渡して欲しいと頼まれていたのです。
どうして、そんなことを頼まれたのかと言うと、これににもわけがあって……
とても長い話なので、省略します。

実は、ここのご主人はかなりの写真好き。
カレンダーを一枚めくるごとに「わーっ」とか「おーっ」とか「ひぇー」とか、
感嘆とも悲鳴ともつかない声があがります。
最後には、常連とおぼしきお客さんに、半ば無理矢理カレンダーを見せて喜んでいました。
食事中だったそのお客さんは、ちょっと困った顔をされていましたが……。

私のまわりには、良くも悪くも風景写真を見慣れている人が多いので、風景写真を見て、こんなにも感動する人を見るのは久しぶりです。
風景写真にはやっぱり人の気持ちを動かす力があるのだということを実感して、私もうれしくなりました。

e0041948_15321914.jpgところで、この前田さんのカレンダー「見つめる木」は、12ヶ月+表紙すべてが同じ一本の木を捉えた作品で構成されています。
一つの被写体をモチーフにして構成された作品は、前田真三賞の応募作などでもよく目にしますが、そのほとんどがバリエーションが不足という問題を抱えていました。
この作品集(カレンダー)をご覧になると、きっと、皆さんのバリエーションに対する認識が変わるとことでしょう。

前田さんは、『風景写真』1-2月号から、やはり同じ木を題材にした連載フォトエッセイ「一本の木」が始まります。
風景写真家が、たった一本の木に向ける眼差しの奥に潜む心情がどのようなものなのか。どのように一本の木を題材にテーマを深めていくのか。
私も楽しみです。

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by fukei-kaoru | 2007-11-23 15:33 | 人・写真家

風景写真の心

「歌はテクニックじゃない。心だ。
だが、心を伝えるためにはテクニックが必要だ」

これは、私の大好きなコメディードラマ「王様のレストラン」(三谷幸喜脚本)の中の台詞です。
「なぜ、レストランなのに歌の心なの?」と思った方は爆笑必至の本編(第9話)をご覧いただくとして、この台詞、風景写真にも言えることだと思いませんか?

私たち編集部では、誌面に掲載する写真を選ぶとき、写真の持つ「強さ」を見ています。
この「強さ」を言葉で表現するのは大変難しく、単に見た目の印象の強さを指すものだけではありません。
そこには、その写真が伝えようとしているもの=主題の強さというものも含まれているのです。
紅葉が鮮やかだとか、夕焼けが真っ赤だといった被写体の状況の持つ強さは、むしろ二の次、三の次で、作者が心で見つけた風景、即ち主観的風景写真として、何が描かれているか、ということの方がはるかに重要で、かつ写真に強さを与えるものだと思います。

単に主題を表現するということを考えるなら、構図によって主題に強さを与えることは可能です。実はそこに“上手い人”が陥りやすい落とし穴があります。

表現に熟達すれば、何気ない風景を構図的なテクニックによって強い風景写真に仕上げることもできるようになります。それ自体は上達と言っていいものです。
ところが、フォトコンテストに応募される作品を拝見していると、構図的なテクニックに対する過信から、“風景に感動する気持ち”が、本人も気づかないうちに、いつの間にか“絵になる”程度の感覚にすり替わってしまう人がいるように思うのです。
そのような人は、作画に対する考えができているので、さして感動していなくても、目を引く強い作品を撮ることができます。
ときには入賞することもあるでしょう。
しかし、何度も同じ人の作品を見ていると、やがて気持ちが惹かれなくなります。
いくら上手くても、主題に“心”が入っていないからです。

もし、「自分の方がうまいのに、写真を認めてもらえない」と不平を感じることがあるとすれば、そんなときは少し立ち止まって考えてみてください。
あなたは、本当に感動して風景を撮っていますか?
最近、風景との出合に心をふるわせたことはありますか?
心で風景を見ているのではなく、手慣れた題材の中から、テクニックで空疎な主題を切り出してはいませんか?
「風景写真はテクニックじゃない。心」なのです!

「生茶」のコマーシャルで有名な(そんな紹介って?)北大路魯山人(1883 - 1959)は、こんなことを言っていたそうです。

「書家の書、絵描きの絵、料理屋の料理。これほど世の中で嫌いなものはない」

この言葉の意味する深いところがわかっているとは言いませんが、おそらく技巧に走り、心のない作品を作る一部の芸術家のことを言っているのではないかと思います。
アマチュアの風景写真であっても……、いいえ、自由に創作ができるアマチュアの風景写真だからこそ、作品に込められた心までもが問われています。

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by fukei-kaoru | 2007-11-22 11:07 | 仕事

風景写真タイトル改善計画ーその2

風景写真を鑑賞したときの“まるで、その場にいるような感覚”は、大きく2つに分けられます。それは臨場感と臨“情”感です。
どちらも、その場にいるような感覚のことですが、特に風景写真においては、前者は風景のディテール、質感、遠近感などをリアルに伝えている写真から感じることが多いようです。
一般的に、このような観賞感覚は主に克明描写によって得やすいと言えるでしょう。つまり、抽象よりは具象、ボケよりはピントのあった表現です。

一方、臨情感は、風景の前に立つ、作者の感情や感覚がリアルに感じられることを言います。
臨情感のある作品からは、作者の心の中に浮かんでいた想い、五感で感じていた感覚などが自分のものとして感じられ、あたかも自分がその場に立って風景を見ているような感覚にとらわれます。
その感覚のことを私は臨情感と呼んでいますが、造語なので辞書には載っていません。

臨場感と臨情感は相反するものではなく、二つを共に備えた作品もあれば、どちらかの要素が強い作品もあります。また、どちらの要素が強い方が優れているということでもありません。
ただ一つ言えることは、前回に述べた主観的風景写真では、後者の臨情感が大事な要素となるということです。そして、臨情感を伝えるにはタイトルの役割が非常に重要なものとなります。

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Copyright(c) 風景写真出版

写真は『風景写真』2007年1-2月号フォトコンテスト・テーマ部門[音]で優秀作品賞を獲得した本田雄一さんの作品です。
皆さんは、この作品の映像から何を感じるでしょうか。
雪に覆われた真冬の風景。
画面中央で笹が風に吹かれて揺れています。
一見すると、厳しい寒さを表現しているかのように思えます。

実は、この作品のタイトルは「はにかみ屋」と言います。
タイトルを知ると、作者がなぜ笹を画面中央に大きく捉えたのか、その笹を幹の後ろに少し隠した意味、どうして笹がぶれているのか、といった作画意図がくっきりと浮かび上がってきませんか?
それがわかれば、寒さの中で、足元の笹の葉が風に揺れる様に、温かな眼差しを向けていた作者の心情に、自分の気持ちを重ねていくこともできるはずです。
それが臨情感なのです。

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by fukei-kaoru | 2007-11-21 21:38 | 作品タイトル

『風景写真』WEBサイトがリニューアルしました!

すでにご覧になった方もいると思いますが、
本日、『風景写真』WEBサイトがリニューアルしました!

新しいサイトは、これまでに比べてシンプルに、見やすいページ構成になっています。
このブログもメインメニューの中に組み込まれてしまいました……。
これで、ちゃんと更新しないといけなくなってしまった。
ちょっと、トホホな感じです。

それにしても、本日はこれで3回目の更新。
もちろん、いつまでも、こんなペースが続くわけもなく……。

1-2月号の編集も山場(修羅場?)に差し掛かってきましたが、
死なない程度に頑張ります。

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by fukei-kaoru | 2007-11-20 23:41 | お知らせ

悲しい現実

「先生、もう撮ってもいいですか?」
「いや、まだピントが合わないからダメだ」

昨日、編集部を訪れた某写真家から聞いた話です。
ある日の夜明け前、あるポイントで三脚を立ててシャッターチャンスを待っていると、
突如、押し寄せてきたアマチュア写真家のグループに囲まれ、冒頭の会話が聞こえてきたそうです。

そのグループは全員デジタルカメラで、一部は手持ち撮影。
指導者も手持ちで構えています。
デジタルカメラが悪いと言いたいわけではありません。
いくらISO感度が自在に変えられるからと言って、AFが利かないような暗い時間帯に手持ち撮影はないでしょう?
さらに賢明な皆さんは、既に「もしかして……」と感じているのではないでしょうか?
そう、そこは無限遠でもOKな状況だったのです。

このレベルの指導者が“先生”と呼ばれ、風景写真を教えているという悲しい現実があります。
もちろん、このようなセンセーに、主観的な風景写真云々が語れるわけもありません。
こんなセンセーの話を聞くことが決して珍しくはない、ということも、残念ながら事実なのです。

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by fukei-kaoru | 2007-11-20 18:30 | 仕事

夢色の世界

『風景写真』誌上でもお知らせしている林幸恵さんの写真集「夢色の世界」が、ついに仕上がり編集部に届けられました。
ドキドキ、ワクワクしながら包装紙を開き、ゆっくりとページをめくると、そこはもう“夢色”の林ワールド。
期待以上の仕上がりに、スタッフも印刷会社の営業さんも、思わず満足の笑みがこぼれます。
良い仕事をしたあとの、こういう雰囲気って良いものですね。


風景を撮ることは、ある意味で世界を撮ることに通じるかもしれません。
ここで言う世界とは、「80日間世界一周」の世界ではなく、その人独自の世界観という意味です。
目の前の風景は誰が見ても同じだと思うかもしれませんが、心で風景を読み、主観的に切り取れば、その人だけの世界が描かれます。
そのことは、前回の例でもおわかりいただけるのではないでしょうか。
そうして撮られた主観的な風景写真が集積することによって、さらに世界は深まり広がっていきます。
そして、編集という作業を経ることによって、世界はくっきりと輪郭を描き、ひとつの世界観が生まれるのです。

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林さんが撮っているのは、主にマクロレンズによる小さな風景ですが、まさに世界としての広がりを持っています。
この本を開く人は、その都度、林ワールドの中で展開する物語や、事件に出会うことでしょう。

驚くべきは、これほど豊かで奥行きのある世界のほとんどすべてが、林さんの自宅からそう離れていないフィールドでとらえられているということ。
もし、皆さんの中に「マクロなんて……」と思っている人がいたとしたら、そういう人にこそ、この本を見てほしい。
身近なフィールドの小さな世界だけで、これほどのものが紡ぎだせることに、きっと驚くはずです。
そして、次にはこう思うかもしれません。
「あちこちに出かけて、もっと広い風景撮っていても、自分の風景写真はここまで豊かな世界を持っているだろうか……」と。
ぜひともご覧あれ!
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by fukei-kaoru | 2007-11-20 03:36 | お知らせ

風景写真タイトル改善計画ーその1

今回から時々気まぐれに風景写真のタイトルの付け方について書いてみようと思います。

*****

前回、このブログで、「情報に頼りすぎない自分を持つべき」と述べました。
なぜでしょう?

みぞんさんのコメントも大筋で正解なのですが、少し補足すると、風景写真とは“場所”を撮るものではなく、自分の目と心で発見した“出合の瞬間”を描くものだから、ということなのです。

これからの風景写真においては、心で風景を見て、描くことがますます重要になります。
なぜなら、場所とタイミングで撮る風景写真は、もはや、ほとんど撮り尽くされているからです。
仮に、目新しいポイントが発見されたとしても、すぐに情報が広まり、たちまち新鮮味は消え失せることでしょう。

それに対して心で見つける風景は、無限で尽きることがありません。
今、心で見る風景=主観的風景写真が、風景写真の大きな流れとなりつつあるのです。

では、主観的風景と、「場所を撮る」風景写真では何が違うのでしょうか?
わかりやすい例で、説明しましょう。

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Copyright(c) 風景写真出版

写真は、『風景写真』2007年11-12月号のフォトコンテスト・テーマ部門「未来」に入賞した、たはら芳明さんの作品です。
皆さんは、この作品から何を感じますか。
一緒に作品を“読んで”みましょう。

画面の中でもっとも視線を集めるのは、ほぼ中央に捉えられている薪小屋です。
つまり、作者はこの画面を創る上で、この小屋をもっとも重要だと考えていた、ということになります。
次に目をひくのはうっすらと雪が積もった道でしょう。
この状況から、この作品の季節感を推測してみてください。

地面の雪の様子は、残雪というよりは、初雪の趣です。
背景の青々とした竹林の色彩も、冬がまだ浅いことをイメージさせます。
そして中央の薪小屋には、屋根まで目一杯薪が積まれており、まだ使われている様子がありません。
ここからも、季節がまだ冬支度を整えたばかりの頃と読むことができるのです。

こじつけだと思いますか?
いいえ、作者にはこの場面にはっきりとそのようなイメージが見えていたはずです。
だからこそ、この場面で、このフレーミングでシャッターを切ったのです。

この作品のタイトルは「安息の越年」と言います。
いかがですか? 温もりのある部屋に響く家族の笑い声が聞こえてくるような気がしませんか。
なんとなく撮った作品に、後からタイトルを考えてつけたのなら、ここまで画面にはまることはありません。

これが作者が心で見つけた風景なのです。
心で風景を読み、読んだイメージを伝えようと画面を創って描いた風景写真なのです。
この場所を地図で調べて行くことに意味があると思いますか?
仲間に連絡をして呼び寄せることで、何かを得られるでしょうか?
おそらく、ここに来ても、この風景に何の意味も感じない人も少なくないと思います。
場所やシャッターチャンスの情報に頼ってばかりいては、心で風景を見つける感覚が磨かれない、ということがおわかりいただけたでしょうか。

この作品のように主観的風景写真は、優れたタイトルをつけることによって作品のイメージが大きく広がります。
逆に、作品のイメージを広げる良いタイトルを考案する感覚、考え方が、主観的な風景写真を撮る上では不可欠と言えます。

今回は、人里の風景を例に挙げましたが、自然風景や広い風景にも、もちろん心で見つける風景はあります。
これからしばらく、主観的な風景写真とタイトルについて、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
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by fukei-kaoru | 2007-11-16 22:19 | 作品タイトル


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