ビギナーズ・ラック

「写真では、始めて間もない初心者でもたまたま良い写真が撮れてしまうということが起こり得る。こういうことは他の芸術ではあり得ないと思いませんか」
先日、ある風景写真作家と呑んでいたら、こんな話になりました。

確かに、そういう面はなきにしもあらずです。
風景写真に限って言えば、“風景が撮らせてくれる”ような場面に出合うということが比較的頻繁に起こり得ます。
例えば、誰が見ても美しい風景、劇的なシーンは、今のカメラの性能ならシャッターを切れば、誰でもそこそこには美しい写真を撮ることが可能でしょう。
ちょっとバランス感覚がいい人なら、どこかのコンテストに上位入賞するような作品が撮れてしまったりすることがあっても不思議ではありません。

そのような写真に価値がないなどとは思いません。被写体の魅力や、シャッターチャンスも写真の重要な要素だからです。
しかし、“風景が撮らせてくれる”とは、作者の視点が定まっていなければ“風景に撮らされている”ことだとも言えます。
今後、より高度な意味での風景写真は、作者の主観的な視点で風景を“撮っている”のか、あるいは“風景に撮らされている”のかまでも問われるようになるでしょう。
“その瞬間、その場所で、その人の視点がなければ出合えなかった場面”であること。あるいは地味な風景であっても、隅々まで高度な構成力、バランス感覚でまとめられた作品であることなどが、求められるのです。

AE、AFといったカメラの自動化に加えて、デジタル化の恩恵によって、写真はもはやほぼ完全に“押せば写る”時代に入っています。となると、ますますビギナーズ・ラックで良い写真が撮れる可能性が増えそうなものです。
しかし、風景に関して言えば、“押せば写る”ことによって、実は写真がどんどん難しくなるという可能性に皆さんは気が付いていますか?
なぜなら、カメラ操作が簡単になればなるほど、より純粋に作者の感覚や思想、そして緻密で臨機応変な画面構成力が問われるようになっていくのですから。

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by fukei-kaoru | 2008-03-20 21:42 | 風景写真


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