風景写真タイトル改善計画ーその4

今年初めての「風景写真のタイトル改善計画」。
あまりに間があいていたので、その3で終わりと思っていた人も多いかもしれませんね。連載構成とか、別に何にも考えずに書いているので、特に終わりも決めていません。なので、今回で終わりかもしれませんし、その100まで続くかも。

今回は臨情感についてお話ししたいと思います。臨“場”感ではなく、臨“情”感。造語なので、多分辞書には載っていません。
どちらも、まるでその場に立っているような感覚のことですが、臨情感の方は、その場に立っている作者の心情がリアルに感じられることを言います。
そのことについては、その2で解説していますので参照してみてください。

その2にも書いているように臨情感を伝えるにはタイトルの役割が非常に重要です。
極論すれば、タイトルのサポートなしには臨情感を伝えるのは困難です。もっと極論すれば作品のタイトルは臨情感を伝えるためにあると言ってもいいでしょう。
……と言うのは、実はかなり言いすぎです。
実際にはタイトルの付け方には作風によってタイプが分かれる、と私は思っています。しかし、臨情感のあるタイトルの方が考えるのが面白いのと、主観的な風景写真についても理解しやすいと思うので、ここでは臨情感を中心に説明します。

さて、臨情感を感じるタイトルをつけるにはちょっとしたコツがあります。それは、“画面に写っているものをタイトルにしない”ということです。もう少し、詳しく言うと、“画面には写ってないけど、作品で伝えたかったこと”を言葉にするのです。
簡単に言えば、それは、作者が五感で感じていたものや、心に浮かんだ想い、イメージといったものです。
例えば、その2で取り上げた「はにかみ屋」という作品ですが、タイトルを見ず画面だけを見て「笹が恥ずかしがっているようだ」とすぐに思い浮かぶ人はどれくらいいるでしょうか?
確かにこの画面には、“笹がはにかんでいるようだ”という作者のイメージが込められています。その意味で「はにかみ屋」は画面に写されていると言えますが、そのイメージを画面だけから読み取ることを鑑賞者に求めることはあまりにも酷というものです。
つまり、ここで言う「写っているもの」とは、「視覚で認識できるもの」だと考えてください。

タイトルで臨情感を増幅するには、目で見てわかるものをタイトルにするのは原則禁止です。
「はにかみ屋」を例にすれば「雪」「冬」「白樺」「笹」といった語句は使ってはいけません!
いずれも画面を見ればわかるもので、こうした語句を用いると、てきめんにタイトルは説明的でダサイものになります。

次に、“できれば”避けたいのは「寒さ」を説明する語句です。雪が積もり、風が吹いているのですから、寒いことは画面を見ればわかります。
仮に、ここでの主題が“寒さ”にあるのなら、それを心情や五感で感じる感覚に置き換えてみましょう。例えば「耐える」とすると、厳しい寒さに耐えている作者が、そのイメージを風に揺れる笹に託していることがうかがえて、臨情感が感じられます。
ここで微妙なのは「厳寒に耐えて」とか「烈風に耐える」というタイトルです。個人的にはタイトルはなるべくシンプルに説明的な要素を省いた方が良いと思っています。
これは、私の好みを押しつけているのではなく、タイトルからできるだけ説明的要素を削ぎ落とすことで、鑑賞者に想像する余地を残すことが大切なのです。
かと言って、まったく意味不明では、鑑賞者を迷わせてしまいます。
わかりにくくなく、説明的ではないギリギリのさじ加減にこそタイトルをつける極意があると知ってください。

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Copyright(c) 風景写真出版

さて、今回ご紹介するのは、最新号のテーマI部門でタイトル賞を獲得している作品です。
咲き誇る桜の下に主のいない自転車が2台。桜には提灯が掛けられ、どうやら花見酒で賑わう公園のようです。
一見して、「提灯や人工物の入った桜なんて……」と思った人もいるかもしれませんが、そういう人は既成概念に縛られていて、作品に込められたメッセージを受け取ろうとしていないのだと思います。それって、風景写真を趣味としていながら、随分損をしていると思いますよ。

さて、この作品のタイトルは「寄り道」と言います。自転車の主はどこで道草を食っているのでしょうか? この作品に「ちょいと一杯、花見酒」なんてタイトルをつけたとしたら、無粋この上ないと思います。
「どこに行ったのだろう?」と鑑賞者がさまざまに想像を巡らせることによって、イメージがどんどん膨らみ、作品に物語が生まれるのです。
視覚的に写っているものはもちろん、自分の心情さえも極力説明しない。それが臨情感を感じさせるタイトルの極意です。


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by fukei-kaoru | 2008-02-26 22:00 | 作品タイトル


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