心の立入禁止ライン

常識ある大人なら、木道のある場所で、木道から降りて湿原などに足を踏み入れて良いか悪いかくらいは判断できるものです。
やっている人はモラルが欠如していると思われても仕方ありません。悲しいかな、風景写真を撮る人の中にも、そういうことをやる人がいることは承知しています。

しかし、こともあろうにプロとして活動している者(写真作家とは言いたくない!)が、生徒をぞろぞろと従えて、木道を外れて湿原に入って踏み荒らし、あまつさえ地域を管理している方に注意を受けたのに対して、「だったらロープを張っておけ」と食ってかかった、という事件があったと、ある信頼できる人から聞きました。
こうなると、怒りを通り越して、あまりのおバカぶりに泣きたくなります。
いやしくも風景を撮ることをなりわいとする者が、自分からロープを張ってくださいと言ってどうするんだよ!

それに、教わってる皆さんも大人なんだからダメなものはダメと言いましょうよ。それが言えない人は、食品偽装とか年金問題のことをとやかく言う資格はありませんよ。
周囲に流されて、やってはいけないことをやり、社会的な責任を果たさなかったという意味ではまったく同じなのですから。

以前に『風景写真』に「立入禁止」について書いた記事がありますので、少々長いのですがここに掲載します。
下のリンクをクリックすると、続きが読めるようになります。
願わくば“風景写真の未来”が明るいものでありますように。





***

「風景写真の未来」
心の立入禁止ライン
石川 薫
(隔月刊・風景写真2006年3-4月号掲載/転載不可)

もう、五、六年前の話になりますが、誌面に掲載されたある作品について、「立入禁止の場所で撮っている」という強い抗議のお手紙をいただきました。同封されていたプリントには、ある省庁の名称で「立入禁止」と書かれた看板が写っています。それを見ると、確かに問題の作品は立入禁止区域の中で撮られているようでした。
 ところが確認のためにその省庁に連絡してみると、どの部署がその看板を管理しているのかが分かりません。関係がありそうな部署をいくつか調べてもらい聞いてみたのですが、どこも違っていました。結局、その省庁は看板とは無関係だったのです。誰がその看板を立てたのかは謎のまま残りましたが、看板に名前のある当事者が、「立入禁止にはしていない」と言っているのですから、そこで話は終わってしまいました。
 実は、その場所はある植物の数少ない自生地で、看板のあるなしに関わらず足を踏み入れるのには注意が必要な場所でした。そこでの作品が注目されたことで、にわかにアマチュア写真家が増え、植生が荒らされることが懸念されていました。看板も自然保護を目的として立てられたもののようです。そのため、それ以降、本誌ではそこで撮られた作品の掲載を控えています。
 フォトコンテストに応募された作品などについて「立入禁止」が問題になると、必ずと言っていいくらい作者が主張するのは「立入禁止とは知らなかった」「みんな入って撮っている」「自分は自然を傷めないよう気を付けているから大丈夫」ということです。その主張は、ある意味筋が通っているようにも思えます。しかし、写真によって風景・自然の美しさを捉えようとする者であるなら、例え柵やロープ、看板で仕切られていなくても、被写体を思いやる気持ちに根ざして足を踏み入れてはならない場所が判断できることも大事だと思うのです。

立入禁止の曖昧な境界

最近、ある国立公園の有名な撮影ポイントについて、どこまで入ることが許されているのか調べてみることがありました。地元の自然保護レンジャーによると立入禁止ということだったのですが、境界がはっきりしないため確認したかったのです。
 レンジャーから自治体の自然保護課、環境省と辿って話を聞くと、意外なことに立入禁止区域を示す明確な線引きがないことが分かりました。環境省の自然保護官の見解は「園路を外れて、林内、植生帯等に立ち入って撮影すると貴重な植物等を損傷することが懸念されることから、このような場所からの撮影はご遠慮いただきたい」というもの。つまり、園路から踏み出さないようにということなのですが、“禁止”ではなく、「自然を保護するため、謹んでください」という“お願い”だと理解できます。曖昧なようですが、もし明確に規制するとなると、国立公園内のどこを見ても柵やロープ、立入禁止の看板だらけという状況になってしまうでしょう。なるほど、曖昧だからこそ景観が守られ、自然に親しめるのか、と納得できました。冒頭のケースも当時は調べ切れませんでしたが、省庁が直接管理しているのではなく、自治体や、自治体に関係する団体の“お願い”だったのかもしれません。
 本誌のフォトコンテストでは、応募規定に「自然保護や公序良俗の精神に反する作品は、審査の対象から除外します」と明記しています。自然保護官の見解にあるような場所で撮影することを控えるのは当然だと思いますが、国立公園に限らず入ってはいけないことが分かりにくい場所があることも事実です。もし、自然を保護するために立ち入りが制限されている場所と気付かず撮影された作品が掲載されてしまった場合は、作者の協力を得て、情報公開していくことも検討したいと思います。

自然のオーバーユース

近年、自然のオーバーユース(過剰利用)が問題になっています。オーバーユースとは、利用者の数が自然の回復能力を上回ることで、上高地、尾瀬、乗鞍などで車による入山が規制されたのもオーバーユースによる影響が一因でした。例えば、昔なら「ちょっとその辺でトイレ……」が許されたのが、今では、それが深刻な土壌や水質の汚染を招いています。一人の「ちょっと草むらに入るくらい良いだろう」「気を付けているから自分一人くらいは大丈夫」が、自然を回復不能なほどに傷めている現実があるのです。
 二〇〇二年に自然公園法が改正され、環境大臣の指定により国立公園内に立入制限地区を設けることができるようになりました。現在、まだ具体的な適用はないようですが、このまま私たちが自然保護という目には見えない、心の立入禁止ラインを踏み越え続けていると、柵や看板だらけの国立公園という未来も、あり得ない話でないのです。


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by fukei-kaoru | 2008-01-27 22:42 | 仕事


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