模倣の行く末

「○○だったら、私、凄い写真いっぱい持ってますから」
と言って、編集部に写真を持ち込んで来る方は珍しくありません。
○○には、裏磐梯、尾瀬、富士山などの有名撮影ポイントの地名が入ると思ってください。
私は、こういうことを言われた途端に、持ち込まれる作品について、ほとんど何も期待しなくなります。
すべて、とは言いませんが、このように言う人のほとんどが、よく知られたポイントで、“空がもの凄く赤く焼けた”とか“雲の形状が見たこともない、特異なものだった”とか“この時期、滅多に出ない霧が出た”とか、あるいはそのすべての条件が重なったといったような作品を持ってくるからです。

これから述べることによって、嫌な思いをする人がいるかもしれませんが、大事なことなので敢えて書きます。
少なくとも風景写真作家として誌面で取り上げるか否かを基準に作品を見るときに、よく撮られる場所の状況違いだけしか撮っていない写真家には、私はまったく興味が持てません。
もちろん、よく知られている撮影ポイントであっても個性的な表現の作品を撮ることはできます。しかし、「○○では、もっと凄い写真を……」と言われれば、その人がどういう狙い方をしているか、概ね想像はつきます。

風景写真をよく知らない写真家の中には、「日本にはもう撮るべき風景は残されていない」とか「日本の小さな風景より、海外にはもっと凄い風景がいくらでもある」と言って憚らない人がいます。
このブログでも何度も述べているように、風景写真とは地形や場所を撮るものではなく、心で見つけた風景を主観的に撮るものですから、そのような批判は当たりません。
もし、そのように言う人が人物を撮るカメラマンなら、こう聞きたい。
「あなたはスーパーモデルでないと、良い写真が撮れないのですか?」と。

しかし、そのような勘違いをする人がいても責められないのは、あまりにも風景のスーパーモデル狙いのアマチュア写真家が多いからです。
いえ、そういう人が多くても構わないのです。
問題は、風景写真がそこで完結すると思いこんでいる人が多すぎることです。
だから、冒頭の台詞が出てくるわけです。
「もっと凄いの持ってます」

よく知られた撮影ポイントで、特定のタイミングに起きる現象を狙ったり、撮影地ガイドで調べたポイントに出かけて写真を撮ることが悪いことだとは思いません。
むしろ、風景写真に親しみ、撮影の感覚を養う上で、他の誰かが見つけた風景に倣って撮ることは、とても良い修練になると思います。
また、自然のドラマに触れること自体にも風景写真の醍醐味はありますし、特定の場所、特定のタイミングの風景をコレクションしていくことも、また楽しみ方です。
ただ、その方向には風景写真の真の高みはないのです。
それは多くの場合、気象条件などの違いはあっても、習作であり、模倣であり、被写体の力に頼った表現なのです。

もちろん、すべての人が頂点を目指す必要はありません。
しかし、少なくとも表現として風景写真を楽しむ人であるならば、独自の表現を求めて、心で風景を撮っている作家、主観的表現のなされた風景写真に敬意を持ってほしいと思うのです。

どうして、こんな憎まれるようなことを書くのか。
それは、風景写真が抱えるさまざまな問題が、“場所狙い”の撮り方に起因していると思うからです。
例えば、限られたポイントに多数の写真家が集中することによるトラブル。
「日本には撮るべき風景はもはやない」などという浅薄な批判。
ポイントとタイミングを知っているという程度で“写真家先生”を名乗れてしまう、あるいは逆に才能ある風景写真作家が、ガイド、インストラクターとして埋没していく理不尽……。

難しいことではありません。
ほんの少しだけでも作品の心に目を向けて欲しい、そのシーンを見つけた作家の感覚を思って欲しい、そこからすべては始まると思います。

「100人展」を通じて、思いを同じくする全国の写真作家と交流を持てたことは大きな収穫でした。
2008年も、ささやかながら『風景写真』は風景写真の真の楽しみ、真の高みを伝えていきたいと思っています。
願わくば、これからも皆さんの理解とご声援を賜りたいと思います。
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by fukei-kaoru | 2007-12-26 22:36 | 仕事


『風景写真』11-12月号発売中です


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