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風景写真の心

「歌はテクニックじゃない。心だ。
だが、心を伝えるためにはテクニックが必要だ」

これは、私の大好きなコメディードラマ「王様のレストラン」(三谷幸喜脚本)の中の台詞です。
「なぜ、レストランなのに歌の心なの?」と思った方は爆笑必至の本編(第9話)をご覧いただくとして、この台詞、風景写真にも言えることだと思いませんか?

私たち編集部では、誌面に掲載する写真を選ぶとき、写真の持つ「強さ」を見ています。
この「強さ」を言葉で表現するのは大変難しく、単に見た目の印象の強さを指すものだけではありません。
そこには、その写真が伝えようとしているもの=主題の強さというものも含まれているのです。
紅葉が鮮やかだとか、夕焼けが真っ赤だといった被写体の状況の持つ強さは、むしろ二の次、三の次で、作者が心で見つけた風景、即ち主観的風景写真として、何が描かれているか、ということの方がはるかに重要で、かつ写真に強さを与えるものだと思います。

単に主題を表現するということを考えるなら、構図によって主題に強さを与えることは可能です。実はそこに“上手い人”が陥りやすい落とし穴があります。

表現に熟達すれば、何気ない風景を構図的なテクニックによって強い風景写真に仕上げることもできるようになります。それ自体は上達と言っていいものです。
ところが、フォトコンテストに応募される作品を拝見していると、構図的なテクニックに対する過信から、“風景に感動する気持ち”が、本人も気づかないうちに、いつの間にか“絵になる”程度の感覚にすり替わってしまう人がいるように思うのです。
そのような人は、作画に対する考えができているので、さして感動していなくても、目を引く強い作品を撮ることができます。
ときには入賞することもあるでしょう。
しかし、何度も同じ人の作品を見ていると、やがて気持ちが惹かれなくなります。
いくら上手くても、主題に“心”が入っていないからです。

もし、「自分の方がうまいのに、写真を認めてもらえない」と不平を感じることがあるとすれば、そんなときは少し立ち止まって考えてみてください。
あなたは、本当に感動して風景を撮っていますか?
最近、風景との出合に心をふるわせたことはありますか?
心で風景を見ているのではなく、手慣れた題材の中から、テクニックで空疎な主題を切り出してはいませんか?
「風景写真はテクニックじゃない。心」なのです!

「生茶」のコマーシャルで有名な(そんな紹介って?)北大路魯山人(1883 - 1959)は、こんなことを言っていたそうです。

「書家の書、絵描きの絵、料理屋の料理。これほど世の中で嫌いなものはない」

この言葉の意味する深いところがわかっているとは言いませんが、おそらく技巧に走り、心のない作品を作る一部の芸術家のことを言っているのではないかと思います。
アマチュアの風景写真であっても……、いいえ、自由に創作ができるアマチュアの風景写真だからこそ、作品に込められた心までもが問われています。

風景写真の心_e0041948_103937100.jpg
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by fukei-kaoru | 2007-11-22 11:07 | 仕事


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by fukei-kaoru

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