演出と風景邪心家

『風景写真』のフォトコンテストには「演出禁止」という規定があります。
「人物写真ならともかかく、風景写真で“演出”ってどういうこと?」と疑問に思っている人もいるかもしれませんが、簡単に言えば、「撮影するのに都合がいいように風景を作ってしまうこと」です。

例えば、よく聞く話ですが、トンボなどの昆虫を接着材で草花にくっつけるとか、花を撮りやすい場所に植えて撮るというのがそれにあたります。
その場に落ちている落葉や落花の向きを少し直したり、動かすくらいのことをうるさく言うつもりはありませんが、別の場所から持ってきて、本来それがない場所に置いたり、周辺から多量に集めてばらまいて撮るのは、立派な演出と言えるでしょう。

もともと演出は写真表現の手法の一つであり、演出=悪というわけではありません。単に『風景写真』フォトコンテストのルールとしては認められていないというだけのことです。
では、なぜ『風景写真』フォトコンテストでは演出を認めていないかというと、まず第一に本誌では「ありのままの風景との出合を見つめること」の大切さを伝えたいということがあります。
これについては「ありのままの出合の“イメージ”を写真に表現するには、ときには演出も必要ではないか」というご意見もあるかもしれせん。
しかし、フォトコンテストはアマチュアの皆さんが表現を高め合う場であるわけですから、その場においては風景に向かうベーシックな姿勢、精神というものを大切にしたいと思っているのです。

ただ、それよりも問題なのは、風景写真の場合、演出行為が自然や環境を傷めたり、写真家のモラルを疑われるるような行為につながりやすいということです。
前述のトンボの例などは言うまでもありませんが、人の土地の花を抜いて、構図を決めるのに具合のいい場所に穴を掘って植えたという不届きな“邪心家”(こんなヤツを“写真家”とは呼びたくない!)の話を聞いたことがあります。
また、ある写真家が枝振りの良い紅葉を見つけて、狙ってみると何か違和感を感じるので近寄ってよく見てみると、幹に枝を釘で打ち付けてあった、という話も聞きました。
おそらく、こんな話は皆さんもよく見聞きされていることでしょう。
大変、残念なことではありますが、本誌のフォトコンテストで演出を認めてしまうと、結果的にこうした行為を助長することになりかねないと思うのです。

ちょっと前に、「よくこんな場面が撮れたな〜」と感心する写真があったのですが、しばらくすると、同じような状況を捉えた作品をちょくちょく見かけるようになりました。
しかし、よくよく考えてみると、そのような場面が頻繁に現れるはずがないのです。どうやらそれは手の込んだ演出というか、トリックらしいということに後で気が付きました。

ありのままの風景の姿を直視せずに、自分の都合の良いように作りかえるようなことをしていては、風景の本当の声を聞くことができなくなるという気がするのですけどねぇ……。

何はともあれ、イチロー選手は今日もヒットを打って、22試合連続安打です。
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by fukei-kaoru | 2009-05-30 16:53 | 風景写真


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